視点死刑 懲役25年

キチガイじみた病に犯された男の記録

飴と鞭と視点

これまで彼の私に対する辛辣な態度ばかりを問題にしてきたが、もう一方で彼は私に対して物凄く甘く此方の言うことは何でも受け入れて訊いてくれる超寛大で寛容な側面もあるのであった。

これは無論私との関係が悪化してから取り始めた態度だから自分の元に私を引き留めて置くための策略にすぎないが、人間は自分が他人にしてもらいたいことを、自ら体現するところがあるから、そういう側面もあったかもしれない。

例えばその日に買ったサイボーグ009全巻を貸してくれと頼んだら貸してくれるのであった。 (こんな頼みごとをする私もどうかしているが)

一方で寛容、一方で非寛容な態度を取りまるで振り子のように両者の間を行ったり来たりするのであった。

これは、自分の精神的安定の為にきわめて不都合だったと思われる。(どこまで計算された策略だったのかは知らぬが、私のことを精神的に追い詰めるという意味では成功)これは、一種のダブルバインドで、とっちつかづの態度をとられると、取られた側はある種の分裂病を、引き起こしてしまうからである。

彼の一貫性のない態度はそれ事態は一環されており、例えばあるミュージシャンを嫌いだと言ったかと思うと別の時に好きだといってみたり、俺には心の深い所で繋がりを感じる友達がいると言ったかとおもえば、俺は誰といるときでも仮面をつけていると言ってみたり。

この、彼の態度にも此方は苦慮させられた。私の中では彼は絶対的な存在者として君臨していたので、その都度言うことに違いがあり、正反対の両方を行き来するので、おまえの本音は一体どこにあるんだよと言いたくなるのであった。

で、飴と鞭だが、これは私が彼の元を去って行くのが恐ろしかった為にとった策略であって、一方で甘い顔をして自分の元に留まらさせ、一方で自分のもとから逃げ出さないために厳しい顔をしとくのであった。この作戦は大成功をおさめた。

例えば、ある時は暴力に訴えある時は非常に可愛がる男と女の関係みたいなもので男の方は女が自分の元に女を常に依存させとく方法を熟知しており、暴力と可愛がりのバランス感覚が抜群みたいな。

私と彼との関係もこのカップルとにたようなもので、彼は私が彼にどうすれば依存するのか熟知しついるようであって、私の中の彼は本当に絶対的な存在であり彼は私の全てを受け入れてくれると思い込んでいた。

先に書いた通り自分が他人にしてもらいたいことを、自ら再現するところが人間にはあるから、彼は自分の全てを受け入れてくれる人間をよくしていたとも考えられるが、真の目的はやはりどう考えても私を自分に依存させておくことであった。

そして、彼の元から逃げ出さないように、彼の悪口を誰にも語らないように監視の視点が私の精神の隅々まで行き渡っているのであった。

窒息寸前であった。がしかし、私はこの窮地を本音の歪曲、自己欺瞞、合理化、そして、抑圧によって乗り切ったのであった。